ナンキンハゼは中国原産で、トウダイグサ科の落葉広葉樹です。街路樹を始め、様々なところで見られるようになりました。私の身近なところにも多くあるので約1年観察してみました。そして不思議に思ったことを調べてみると、この植物の繁殖の戦略を知り感動したので紹介します。
ナンキンハゼが人の目につくところに植えられてきた理由の一つとして考えられるのは、四季を通じて私たちの目を楽しませてくれるところにあると思います。

新芽が出てから夏に向かう5月頃、黄色い房が出てきます。
これは雄花と雌花です。
黄色い房一本にそれぞれ雄花と雌花が付いています。
しかし、雄花と雌花が同時に咲いていないのに気付きました。不思議に思ってしらべていくと、自家受粉(その木の雄花と雌花で受粉すること)を避けるために時期をずらして開花するとか!!

上の画像では先に雌花が咲いています。根元の赤い丸で囲った部分にヒョロヒョロとしているものがありますがそれが開花している雌花です(それ以外の部分が全部雄花のツボミです)。
これに合わせて咲いている雄花がないと受粉しないため、木によって開花の時期をずらしたり、なんと雄花が先に開花する木があったりするそうです。

↑ これは雌花よりも先に雄花が咲いています。

↑ これは、雄花が咲いていますがよく見ると雌花の部分にはすでに実になっています。
最初にこれを見て、今頃雄花が咲いても意味ないのでは?と思ったのですが、この雄花は他の木の雌花に対して咲いているのでした。

↑ 雄花が枯れて、実はさらに大きくなっています。

↑ 夏には、枯れた雄花が落ちて実だけが残ります。
この後は秋が近くなるにしたがって色が黒くなっていきます。

↑ 黒くなった実が割れて中から白い種が見えてくるのは夏の終わりごろの葉が色付く前です。
この後、黒い殻が落ちて中の白い種だけが残ると.…
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葉が赤く色付いてきて、全体が赤と緑と白になりとてもキレイになります。

落葉樹ですので、葉が散っていきだんだん実だけが残ります。
この状態はカラカラになっているので、リースの素材にしたりこれだけで飾ったりするとステキです。
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この実は鳥たちが大好きでキジバトやムクドリ、ヒヨドリなどが食べているのをよく見ます。

特に私はキジバトが食べているのをよく見ます。

食べ尽くしてしまうと、春までこの姿です。
おもしろい開花のしくみや、季節によって姿を変え紅葉も美しい魅力的な植物なのですが、最初に記した通り外来種です。しかも鳥が大好きで、実は離れた所で糞と一緒に土に落ち、そこから発芽するので広範囲でどんどん増えてきています。
それによって、もともと日本にある植物に影響が出てきているという話も聞きます。
奈良県はこの木の駆除に力を入れているようです。シカはナンキンハゼの芽や樹皮は好まないようで、どんどん増えてきているとのこと。
環境省などが作る「生態系被害防止外来種リスト」では照葉樹林の環境に影響を及ぼす恐れのある「その他の総合対策外来種」に含まれており課題も多そうです。
街路樹や公園などで多くの人たちを楽しませている木ですが、これからどのように付き合っていかなければいけないのか考えさせられます。